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【感想】おやすみプンプンを読み終えて、世界を前に進めていこうと思った話

 ある日Twitterに流れてきたマンガ「おやすみプンプン」を本日読み終えた。
 連載開始は2007年、終了は2013年。読み終えたのは2021年なので、なかなか時間が開いてしまっての読完である。
 しかしまぁ2010年前後のぼくはというと、割とメンタルブレイクなことも多かったお年頃だった。作品で描かれている内容的に鬱屈した場面も多く、連載中の段階で出会えていたとしても途中で読むのを止めていただろう。あるいは、精神的な干渉を受けてよりヤバイ精神状態に突入していたかもしれない。
 比較的メンタルが落ち着いている今だからこそ、一か月以上に渡ってプンプンの人生に触れることができた。そう思っておくこととする。



 全147話で描かれるおやすみプンプンは、「フツーの」少年であるプンプンの人生を追った作品だ。



 運命の人かもしれない女の子・田中愛子ちゃんとの会者定離の物語。
 シュール的な小学生時代から、リアリスティック的な社会生活時代へ。
 運命の人ではない人々にプンプンを出会わせながら、世界は彼の成長と比例して時間を進めていく。

 
 

 あらすじ的にはそんな感じ。
 ここまでで気になった人は、マンガワン等のマンガアプリで配信しているので読んで下さい。
 マンガワン、初回登録で50話くらい読めるはず(2021年7月現在)。
 
 
 おやすみプンプンを読み始めるきっかけとなったのは、主人公プンプン(とその家族)の特異な姿でした。
 プンプンの友人・知人とは明らかに描き方の異なる、子供が描いた落書きのような姿をしているプンプン。
 彼が意図的にこういう描き方をされているのは何故なのか。その疑問がこの物語を追いかける導線となりました。
 この疑問に対しての解答は144話で得られるのですが、物語を追っていく中で予想し難いものでもなく、まぁすんなり受け入れられるものでした。ところどころに伏線のようなものもありましたし。

 印象的なのは解答自体についてではなく、それが示されたあとのあるセリフです。
 プンプンの人生には色々ありました。フツーではありますが、フツーであるがために、色々なことが。
 終盤でも色々あって、色々なことが終焉を迎えた144話でプンプンはとある女性に言われます。
 

 
「君が考えてる事、もし他人に上手く言葉で伝えられない時は、あたしが代わりに伝えてあげるから」
 

 
 彼女にとってプンプンが運命の人だとぼくは思うのですが、プンプンにとってはきっとそうではないのでしょう。
 ただ、彼はずっと、この言葉を誰かに言ってもらいたかったのではないかなぁと思うのです。
 
 自己評価の低いプンプンは自発的に喋らないことがほとんどです。小学生編以降は特にそれが顕著でしょう。
 別の誰かを演じていたり、または誰かに求められた役割を果たしていたりしていたり、あるいは誰かを思いやっていたり。そういう自分自身の考えを出さないときに限って饒舌に喋っていたような、そんな印象です。
 そんな彼の考えを引き出そうとする人はいました。身を案じる人たちもいました。
 ただ、「代わりに伝えてあげる」と言ったのは彼女だけな気がします。



 実際、プンプンが彼女の言葉で感銘を受けたという描写はありません。続く145話を見る限りでも、彼のアイデンティティを占めているのは別の存在であることは間違いありません。
 それでも、彼女という他者との仲介者を通し、自分の考えを他者に伝えづらいプンプンは社会を多少生きやすくなったのではないでしょうか。それもはっきりとは分からないけれど、小学生の頃に伝えたかった事を伝えられるくらいには。

 おやすみプンプン、出会えて良い作品でした。自分も生き抜いていきます。

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