飲食店における迷惑行為における雑感
回転寿司大手「スシロー」で撮影されたとみられる、新たな迷惑行為の動画が拡散され、問題となっている。SNSで広がっている動画では、若い男性がレーンを回っている寿司に、消毒用のアルコールスプレーを噴射している様子が映されていた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/42d05c715f71079c9b5ca691965de319fa60216d
2023年1月末からSNS上で大規模に拡散された「ペロペロ事件」から早一ヶ月弱が経過した。
いわゆる「迷惑行為」として2023年上半期における旬のネタになってしまった類似事件は、インターネット上でも連日持て囃されるトレンドワードの一つとなった。一連の事件がリアルタイムで起こっていることはもちろんだが、1年以上前の類似事件が各種動画サイトで掘り起こされ、アルファツイッタラーたちによって再拡散される様子も別段珍しいことではなくなってしまっている。
この記事を書いている前日にも引用ニュースの事件の様子を記録した動画が出回っており、「迷惑行為」がまだまだ世間を賑やかすことは間違いなさそうである。
言うまでもなく、新型コロナの流行以降、辛酸を舐めさせられ続けられてきた飲食店や外食産業にとってはこれ以上にない逆風である。回転寿司店では売りである回転レーンの停止が余儀なくされ、イタズラの小道具として扱われる調味料や割り箸は客席から完全に撤去された。物理的な対策によって模倣犯の犯行はある程度防げているものと推測されるが、消費者層のマインドに刻み込まれてしまったネガティブな印象は早々と払拭できるものでもない。
「この席の前の使用者が変なことをしていたかもしれない」という疑念から、外食は可能な限り避けるといった指針を取り続けるような層が生まれてしまったことを考えれば、一連の事件が飲食店や外食産業に生み出してしまった損失は計り知れない。
犯人たちのほとんどが支払い能力のない若者だということもあって、事件に対する賠償金の訴訟を起こした企業について否定的な声がないこともない。しかしながら、業界全体としての姿勢を社会全体に示すことは、未来の利用者への安心感を買うためにも必要なことであろう。再販や模倣犯を未然に防ぐ防波堤を築くという目的はもちろん、業界に人々を招き入れるためにも訴訟やそれに準じる毅然とした姿勢、厳正とした対処は絶やすべきではない。
それと同時に、飲食店に対して過剰に対応策の実施を迫るのも酷なものだと考える。
実際、皮切り役となった「ペロペロ事件」の報道以降にも関わらず、引用記事のアルコールスプレー噴射事件は発生している。非衛生的な行為をあえて行って注目を浴びることで承認欲求を満たそうとしたのか、あるいは友人同士との戯れの中で悪戯心を過剰に発露してしまったのか。いずれにせよ、若年層においてこういった行動を取ってしまうような存在がいることは、残念ながら想像に難くない。飲食店側がいくら対策を立てようとも、一般的な思考から遥かに逸脱する行動を彼らは実行してしまうものである。カウンター席から全ての物品を排除したとしても、何らかの迷惑行為は果たされてしまうはずだ。
正義感に駆られてたり不安に押し出されるような形で、飲食店側の対策に口を出したくなる人たちの気持ちが全く分からないというわけではない。もちろん、一連の迷惑行為に対する模倣犯の発生を防ぐために、ある程度の対応策実施が飲食店側に求められるのはやむを得ないことだろう。一定の期間を置くまでは、模倣犯の発生を許容し兼ねない環境はできるだけ取り除くしかない。
しかし、飲食店が多くの人の利用を前提とする公衆の場である以上、最低限の性善説に依拠しなければ経営が成り立たないのも事実である。熟慮した上で現状の対応策が実施されているのは間違いないわけで、それ以上のものを求めることは、飲食店側にとって一連の迷惑行為と大差のないものとなってしまう。飲食店側が一番の被害者であることを忘れずにいたい。
長々と記述したが、一連の事件を肯定するつもりは一切ないので悪しからず。
この手の迷惑行為は10年ごとに再来するとは言うものの、再来する期間が長くなるのであればそれにこしたことはない。然るべき法的処置を取って見せしめとできるよう、スシローの今後の起訴がうまくいくよう願いたい。
一方で、一連の事件に付随するSNS上での社会的制裁についても思うところはあるので、時間があるときに別の記事としてまとめていきたいと思う。