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ポケモンカードイラストコンテストにおけるAIイラスト問題の備忘録

 

 日本における画像生成サービス(以下AIイラスト)の認知が広まったのは、おおよそ2022年中頃から2023年の頭だと個人的には考えている。
 海外製の「Midjourney」「Stability AI」等で生成された画像が散見され始め、イラストメーカー「mimic(ミミック)」がリリース開始とサービス停止をし、「CLIP STUDIO PAINT」が新機能として発表画像生成AIパレットを発表して即座に実装を見送るアナウンスを出したこの時期、少なくともTwitter(現X)を利用しているユーザー層にはAIイラストの存在は多く知れ渡ったはずだ。

 そこから2年が経過した2024年6月現在。心理的な敷居はいまだに高いように思われるが、利用しようと思えば容易に利用する環境は既に確立されてきているように思える。

 たとえば「LINE」では、「Stable Diffusion」を元にした画像生成サービス「AIイラストくん」が2023年6月に実装されており、無料プランの範囲においても日本語を入力すればそれだけで画像を出力することができる。出力の精度はともあれ、日本で広く普及している「LINE」で、英語での入力や特定の構文を必要とせず、何よりお金をかけなくても利用可能な点は敷居の低さに繋がっているといえよう。

 別の方面として、2024年6月にはcopainterからラフな下書き元に改める「ペン入れAI」がリリースされていることを挙げておきたい。下書きを元に画像生成を行うアプリやサービスに前例がないわけではないが、用途を限定化することで「イラストの全作成過程をAI任せにすることに違和感がある」という抵抗感をもっている人に対してうまくアプローチできる部分がこのサービスの強みである。
 イラストの全て、あるいは一工程をAIイラストに任せるような人々が増加してきている……かまでは定かではないが、それを実践できる環境が整ってきていることだけは間違いないだろう。


先日発表いたしました一次審査通過300作品において、誠に残念ながら一部の作品に規約違反が発覚いたしました。

該当した作品の応募者は失格の上、一次審査通過作品のリストから除外し、規約に則り繰り上げを実施いたします。

この後の二次審査、最終審査においても、厳正な審査と作品の発表を行えるよう体制を強化の上、運営してまいります。

今後とも、「Pokémon Trading Card Game イラストレーションコンテスト 2024」をどうぞよろしくお願い申し上げます。

Pokémon Trading Card Game イラストレーションコンテスト 2024


 2024年6月14日、前年の12月から翌年1月まで行われた「Pokémon Trading Card Game イラストレーションコンテスト 2024」の一次審査通過作品が公開された。
 最優秀賞には5000ドルが進呈され、また自身の作品がプロモカードになるチャンスを得られるこのコンテストには、毎年多くの参加者が集う。
 ポケモンというIPの大きさを題材にしたコンテストだけあって、参加者はポケモンカードを遊んでいるユーザーだけに限られない。ポケモンが好きで申し込む人も当然いただろうし、もちろん、賞金を獲得するためというものや名を上げようと挑んでいる人たちも少なからずいたことだろう。
 今回の2024年コンテストでは、最終的に約1万点の作品が応募され、300点が一次審査通過作品として公式ホームページ上で公開された。
 参加者たちの悲喜こもごもとした声の中に、「1人3作品までという規約を破り、AIイラストを投稿している人がいる」という声が上がり始めてきたのは、その発表から1日も経っていない頃である。

 約2週間後の6月25日には「一部の作品に規約違反が発覚」した旨の報告、そして通過作品の繰り上げの実施がなされることの発表が公式ホームページ上で公開された。
 この記事を書いている6月26日現在ではまだ繰り上げがなされたリストが公開されていないが、恐らくは話題になっていたAIイラストを除いた上での新しい300点の一次審査通過作品が発表されることだろう。
 とはいえ、厳密にいえばイラストレーションコンテストに「AIイラストを投稿してはいけない」という規約は存在しない。ルールに則って判断をしているとすれば、1人3作品の方に引っ掛かったものとして処理はなされているはずである。
 果たして、「AIイラスト」と思しき作品が全て排除されるのか否か。そして、来年以降のコンテストで規約にAIイラストの禁止が明示されるのか否か。恐らくはこの2点がこの一連の騒動の最終的な注目点となるだろう。


 今回のポケモンカードのイラストコンテストにおいて、複数のAIイラストと思しき作品が審査を通過した。その善し悪しについては一旦置いておくとして、今後もAIイラストサービスやアプリが普及し、それに伴ってイラストの生成精度が上がっていけば、それがAIイラストか否かを審査することは、質的な観点、そして量的な観点からいっても極めて困難になっていくことだろう。人の目をもってしてそれを成すことができるかどうかという話もあるし、非AIイラストをAIイラストと判断してしまった場合、そこに生じる様々な責任をどうとっていくかという話もある。
 IPの知名度でいえば世界有数のポケモンが、AIイラストとどう向き合っていくのか。その判断は他の界隈にも大きな影響を与えることは確実であり、上手くいけば更なる発展を見せ、下手を撃てば糾弾の声に晒されることになることは予想に難くない。備忘録としてはこのあたりで締め、ひとまずはイラストレーションコンテスト 2024の新たなる一次審査通過作品の発表を待ちたいと思う。

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