第52回星雲賞メディア部門賞を受賞したウルトラマンZ~ご鑑賞ください、この名作を~
日本のSF作品を対象に選定される星雲賞をウルトラマンZが受賞した。
星雲賞自体は知らなくても、ウルトラマンZという単語に聞き覚えのある人は多かったのではないだろうか。
2020年に放映されていたこの作品は、放映初日からTwitterを始めとしたとしたSNSで何かと話題になっていた。本編を見たことがなくとも、その名前だけは、あるいは話題となったこのフレーズだけは聞いた覚えがあることだろう。
「ご唱和下さい、我の名を。ウルトラマンゼット!」
この作品の凄いところは1話だけのインパクトに留まらず、全25話放映完了までその話題性を牽引し続けたところにある。ぼくの観測していた範囲では、ここ10年のウルトラマンシリーズの中で一番よく見られていた作品だった。ウルトラマンシリーズのファンや特撮好きというクラスターに収まらず、この作品で初めてウルトラマンを見たという人もいたし、この作品をきっかけに他のウルトラマンシリーズを見始めたという人も散見された。
何故この作品がそこまでの影響力をもったのか。
その理由は単純明快で、シンプルにとても面白かったからだ。
ウルトラマンZは2021年7月現在、AmazonPrime、あるいは円谷の公式の「TSUBURAYA IMAGINATION」でストリーミング配信している。
有料会員ならどちらも追加料金なしで鑑賞可能ではあるが、もしウルトラマンZ以外のウルトラマンを見る可能性があるのなら、TSUBURAYA IMAGINATIONの方に登録して見始めるのがお勧めだ。月額500円でほとんどのウルトラマン作品が鑑賞できることと、AmazonPrimeではほとんどのウルトラマン配信が停止しつつあることがその理由だ。
以下、ウルトラマンZをお勧めする理由を2点挙げておきたいと思う。多少のネタバレを含んでしまっているが、関心を持つ良いフックにはなってくれるはずだ。
興味をもてた時点でウルトラマンZ本編を鑑賞いただければ、幸いである。
(なお文章的に見分けづらくことを避けるため、これから先の文章では、作品名を示すときは「Z」、ウルトラマンZ自身を指すときは「ゼット」と使い分けることとする)
–圧倒的構成力–
ウルトラマンZを語る上で、まず一番最初に上げておきたいのがその構成力の高さだ。
見てもらえると分かると思うのが、ともかく話の作り方がうまい。そうとしか言えない。
後述する様々な要素がウルトラマンZにはあるものの、兎にも角にもまずはお話が面白かった。それがこの作品の一番の強さとなっている。
一例として、ウルトラマンZを語る上で外せない特空機の存在を取り上げておこう。
特空機は正式名称「対怪獣特殊空挺機甲」で、つまりは防衛隊が所有する人型ロボットのことである。
ウルトラマンシリーズにおける防衛隊といえば戦闘機がメインどころではあるが、ウルトラマンZの世界観においては、ウルトラマンゼット登場以前から怪獣が出現しているという設定が存在する。つまり、防衛軍自体が怪獣と対等以上に戦うための戦力を有しているのだ。ウルトラマンが出現している間は特空機の出番はなくなる……ということはもちろんなく、本編全体を通して特空機はウルトラマンと肩を並べて戦うこととなる。
ウルトラマンと共闘するロボット、というこの要素自体がだいぶ「強い」要素ではあるのだが、当初は1号機セブンガーのみの保有だった特空機は本編の進行に合わせて数を増していく。
2号機ウインダム、3号機キングジョーSC、そして4号機ウルトロイドゼロ。
これらの新しい特空機がロールアウトされていくのにはもちろん理由があり、開発されるに至った理由がきちんと本編の流れに沿って描かれている。そこが実に丁寧なのだ。
第4話から登場した2号機ウインダムを例に出そう。1号機セブンガーから多くのフィードバックを受けて製造されたこの機体は、その動力源であるバッテリーチャージに時間を大きく要する難点を抱えており、実践への導入が遅れていた経緯がある。これを改善するために使用されたのが、2話で登場した怪獣ネロンガの発電器官だ。これを元に高出力バッテリーが開発され、ウインダムは正式に稼働し始めることとなる。
続くキングジョーSC、 ウルトロイドゼロ についても開発された経緯があってそのエピソードが描かれるわけだが、開発経緯が面白いというだけなら、それは特空機が登場する単体の回が面白いだけに過ぎない。シリーズとしてのウルトラマンZの面白さは、そこから先をきちんと提示していることにある。
改めて考えてみればおかしい話ではないだろうか。そもそも1号機セブンガー自体がオーバーテクノロジーの塊であり、どういう経緯でこの兵器が作られたのかが不鮮明なのだ。
こういった考察は当時のSNSで頻繁に交わされていたが、正直この辺りの話については、「ただ単に開発されたもの」として扱われるのではないかとぼくは思っていた。フィクションとして納得できる許容範囲ではあるし、深堀しすぎると蛇足になりかねない部分もある。セブンガーという起源を明らかにしなくても、ウルトラマンZの面白さは十分に担保されていた。
しかし、ウルトラマンZの話が進むにつれ、ぼくのその思いは違うものに変わる。
「こんな丁寧にお話を作る作品が、セブンガーの件を空白のままにしておけるのか…?」
ぼくの予感はあたり、疑念に対する解答は12話できちんと掲示されることとなった。
そして、特空機開発の流れは作品全体を構成する要素としてたびたび出てくることとなるのであった。
ウルトラマンZという作品が凄いのが、あくまで上記の特空機要素が主題ではなく、構成上での一要素に過ぎないところだ。他の要素については今回の文章では伏せるが、それらについてもとても見応えがあったことはきちんと記しておきたい。
–見応えある特撮シーン–
長文が続いてしまったので、この部分はシンプルにまとめたいと思う。
ウルトラマンZの特撮シーンは、とても良いものが揃っているのである。
個人的にお勧めしたいのは第6話「帰ってきた男」と第19話「最後の勇者」の二つだ。共通点として、どちらにも先輩ウルトラマンが客演していること (第6話にはウルトラマンジード、第19話にはウルトラマンA) があげられる。特撮作品を普段見たことがない人であっても、映像的にだいぶ力が入っているのが一目で分かるはずだ。リアルタイムでの感想実況において「まるで映画」と称されたのは嘘偽りなく、本当にテレビ作品での映像かと疑うほどに画面が縦横無尽に動いている。その様は是非とも直接見てもらいたい。
お話としてももちろん面白く、この2つは単話として見ても完成度が非常に高い。この二つを見てもらえればウルトラマンZに対する視聴意欲を維持できると思うので、 時間が厳しく全話を見るのが難しいという人もここだけは押さえておくのをお勧めする。
-とりあえず見てください-
以上、長かったり短かったりで2点ほどウルトラマンZのお勧めポイントを記した。
ウルトラマンシリーズに初めて触れるという人にもお勧めできる作品なので、興味が湧いた人は是非見てみてください。そしてウルトラマンZに客演していた先輩ウルトラマンに興味をもったなら、山ほどある過去のシリーズの中から好きなものに手をつけてもらえれば幸いです。