ファスト映画や書籍図解に見られる著作権侵害について
インプットだけではいけない、とは学習においてよく耳にする言葉である。
情報にはインプットとアウトプットの流れがあり、本をただ読むだけでは記載された情報を身につけたとはいえず、それを他人に伝えることができるようになってこそ理解に至ったとする話は、おおよその人が納得できるところではないだろうか。作者の言葉そのままではなく、自分の言葉でそれを噛み砕いて他人に伝えられるようなって、そこで初めて知識を身につけたと言えるのである。
もちろんアウトプットには色々な方法がある。本の知識を図解してまとめてみるという行為も、その一つであるといえよう。とはいえ、個人でそれらの行為をする分には良いが、ネット上に公開して不特定多数の人々の目に触れられるようにするなら、だいぶ話が違ってはくる。
2021年前半にファスト映画問題が話題となったが、これも一種のアウトプットには違いない。個人でまとめる分にはいいが、それをネット上で公開したことで、コンテンツに対する著作権や翻案権の侵害に抵触してしまったのが問題なのだ。承認欲求という側面もあったのだろうが、一連の動画がyoutubeで公開されていたことを鑑みれば、youtubeでの広告収入を第一の目的として行っていたであろうことは想像に難くない。
ファスト映画はテレビ番組でその問題性を指摘された結果、多くの該当動画が削除されるに至った。2021年7月には逮捕者も出現したことで、映像業界における「漫画村」として巨大コンテンツになる前にその芽は摘むことができたようには思える(それでも少なからずグレーゾーンを謳って存続しているところもあるようだが)。
ファスト映画を退けられた者たちが行きついた……かは不明だが、最近だと書籍内容を図解してTwitterといったSNSに投稿している動きが目立つようになっているようだ。出版元に許諾を得た上でビジネスとしてそういったことをやっているサービスもあるが、Twitterのそれらは、ほとんどが著作権管理者に確認を得ないで行われているとみられている。
個人的にはTwitterの場合、ビジネス的な目的よりは承認欲求的な目的がそれらの投稿理由になっているように思える。アウトプットして知識をまとめあげているという自覚と、他人にその知識を啓蒙しようとするボランティア精神である。とはいえそれらが著作権や翻案権の侵害に至っていることは、ファスト映画の例から考えても明らかである。ビジネス的な話でいえば、それらの本が「マンガで分かる~」といったシリーズになった際の収益の可能性をごっそり奪っていることはだいぶ問題だ。無自覚的にやっているとはいえ、罪に問われた際には有罪は避けられないことだろう。
誰かに何かしらのコンテンツを進めるときは、あくまで引用にとどめる。そんな心構えが大事だよね、と思った次第である。