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【感想】ウルトラマントリガー1~6話までの感想-出遅れたスタート

https://www.youtube.com/watch?v=6T0BO3Zd0cc

 『ウルトラマンティガ』 はウルトラマン生誕30周年記念作品として1996年に放送された、レジェンドといっても過言でもない作品である。それまでにない新しいウルトラマンとしてそれまでにない光の巨人像を描いたこの作品は、国内外を問わずに高い人気を誇り、放映終了から25年が経過する2021年現在においても数多くのファンアイテムが販売されている。2014年放送の『ウルトラマンギンガ』から始まるニュージェネレーションヒーローズでは、ほとんどの作品において『ウルトラマンティガ』の要素が存在している。今や親世代を引き寄せるための呼び水として『ウルトラマンティガ』の存在は欠かせないもので、それはこれからにおいても変わらないことが予想される。


 そんなレジェンド作品の遺伝子を継ぐ物語として作り出されたのが、2021年現在で一番新しいウルトラマンである『ウルトラマントリガー』である。当時放映中であった『ウルトラマン クロニクルZ ヒーローズオデッセイ』が露骨にウルトラマンティガを押し出した番組だったので、ティガに関連する何かしらの作品をやるのではないかと予想していた人も少なくはなかったが、ともあれ告知段階でのこの作品の注目度は非常に高いものであった。

https://twitter.com/tsuburayaprod/status/1382604714454392834


 公式に『ウルトラマントリガー』の情報が公開されたのは、円谷公式Twitterの2021年4月15日の告知においてである。『ウルトラマンティガ』を背景に頂き、彼の巨人の色々な要素を散りばめた新しい巨人。ぼくは驚きの声を隠せず、たくさんのつぶやきを当時残したことを覚えている。公開されていく情報については積極的に集め、先行公開されたPVは何回も見返した。ぼくと同じような『ウルトラマンティガ』のファンは数多くいたはずである。今か今かと放映開始を待ち望み、色々な妄想を頭の中に巡らせた。『ウルトラマンZ』というシリーズでも屈指の面白さを誇る作品が直近で排出されたのも、そこに拍車を掛けていた。


 しかし、いざ放送開始されてみると『ウルトラマントリガー』の評判はお世辞にも高いものとは言えないものであった。第1話時点ではそれなりに賑わっていた実況組も放送を重ねるごとに減少。本来であれば花形ともいえるフォームチェンジ披露回である2話、3話の放送終了後も、Twitterのサジェストには「つまらない」「微妙」といったワードが並ぶ結果になってしまった(特撮は良いという評価はあったものの、純粋な褒め言葉でないのは明らかである)。そして4話終了後に驚きの総集編×2回を挟んだことは、東京オリンピック2020開催による放送枠調整の意味合いもあったのだろうが、タイミングとしては最悪なものであった。視聴継続の見切りをつけた人も少なくはなく、放送直前までにあったはずの熱気はほとんどが消失し、控えめに見ても散々な滑り出しになっていたとぼくは観測している。


 以下、『ウルトラマントリガー』1話から6話までの感想を交えながら、ここまで出遅れてしまったのは何故かということについて、ぼんやりと考えついた部分を上げていきたい。


詰め込み過ぎた作品設定の描写と、ウルトラマンZと比較されるキャラ描写

 
 個人的に一番足を引っ張ってしまっていたと思うのは、作品設定の描写の”詰め込み過ぎ”な部分だ。

 現状の『ウルトラマントリガー』は、どちらかというと『ウルトラマンティガ』の設定を整理して再編して作り出されているような印象が強い。その範囲は劇場作品である『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』にまで及び、 具体的にあげれば、主人公のマナカ・ケンゴが育てる人工花・ルルイエの名称はこの映画に登場する遺跡のものであり(というよりはクトゥルフ神話が元ネタなのだがややこしくなるので割愛する)、トリガーでの敵対勢力を担う闇の巨人勢力のオマージュ元もこちらが出典となる。『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』 は本編終了後にティガの世界観を深堀りして製作された作品なわけだが、トリガーにおいてはこの深堀りされた時点でのティガをベースとして仕立て上げられている節があり、だいぶ複雑な設定が展開されていくことが予想される。裏を返せばテレビシリーズとして用意されたウルトラマンティガよりもだいぶ取り回しが難しくなっており、ただ単に「匂わせる」だけにしても制作難易度は跳ね上がっていると考えた方が自然だろう。それ相応の時間配分を用意できたのならその難易度もうまくコントロールできたのだろうが、正直時間はものすごく足りていないように感じられた。おそらく東京オリンピック2020によって総集編を挟む時期が決まっており、そこまでにフォームチェンジ3種と敵勢力のお披露目を済ませておきたいという製作上の都合が悪い意味で重なってしまったのがその理由だろう。欲を言えば、1クールくらいはかけてゆっくり展開してほしかったなぁというのが個人的な考えである。

 また、作品設定の描写を詰め込み過ぎた結果としてキャラクター、およびその人間関係の描写が少なくなってしまったところも見過ごせない部分だろう。舞台が火星だった1話から一転し、地球が舞台となる2話からは5名の防衛隊メンバーが一気に登場することになった。防衛隊『GUTS-SELECT』の隊長であるタツミ・セイヤ、基地であるナースデッセイ号のパイロットのサクマ・テッシン、戦闘機『GUTSファルコン』遠隔操縦パイロットのナナセ・ヒマリ、ヒロインであるシズマ・ユナ、そして技術開発担当のヒジリ・ アキト。演者たちの演技力もあって決して影が薄いというわけではないのだが、主人公のマナカ・ケンゴとの絡みはというとユナとアキトの間でしかほとんど描写されておらず、他のキャラについてはだいぶ色付けされたキャラたちによってギリギリで影に埋没しなかったという見方も可能だ。
 防衛軍キャラの描写が希薄なのは過去作においても言えることで、取り立ててトリガーだけが出来ていないというわけでもない。しかし、直近の『ウルトラマンZ』ではこの辺りの描写が非常に濃厚で魅力的に仕上がっていたため、それがほとんど見られなくなったトリガーではこの辺りの淡泊さが悪目立ちしてしまっているきらいはある。
 キャラ描写で削られた時間は特撮や作品設定の描写に割り当てられており、別にデメリットだけというわけではまぁないのだが、バランスだけで言うならもうちょっとキャラ描写に時間配分を充てても良かったのではないかと考えてしまう。


闇の巨人の犠牲となる怪獣たち

 
 SNS上の感想で不満部分として話題になっているのは、既存怪獣の扱いだ。

 トリガー第1話では、ウルトラマンティガ1話の登場怪獣であるゴルザとメルバの融合怪獣・ゴルバーが登場する。彼らをモチーフとした怪獣は同じ融合怪獣であるファイブキング、トライキング等がいるが、純粋にウルトラマンティガ怪獣のみでまとめられたのは今回のゴルバーが初めてとなる。新シリーズの最初の怪獣として、融合という形であるもののゴルザとメルバがチョイスされたのはティガファンとしては素直に嬉しかった。

 ただ、その扱いに関しては議論の余地が生まれるのも仕方なしというところはある。

 今回のトリガーでは、 『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』 に登場した闇の巨人たちをリメイクした闇の三巨人が登場する。『ウルトラマンオーブ』におけるジャグラス・ジャグラー、あるいは『ウルトラマンタイガ』にトレギアに相当する作品を通して登場し続けるタイプのヴィランである。1話にはカルミラ、2話にはダーゴン、3話にはヒュドラム、といった形で、初登場回についてはそれぞれ1話ずつ贅沢に充てられている。
 カルミラはゴルザ―を使役する形で登場する。ウルトラマントリガーが必殺技であるゼペリオン光線を放った際には、カルミラはゴルザ―を自身を守るための「壁」とし、ゴルザ―はトリガーの攻撃を受けて爆発四散。その出番を終えた。
 普通にウルトラマンと戦って派手に爆発四散するのなら良かったのだが、闇の巨人のキャラを引き立たせるための踏み台とも見えるこの描写については、ぼくはちょっと残念に思うところはあった。
 3話では同じくティガを代表する怪獣であるガゾートが登場するのだが、これもやや唐突に登場したきらいはあり、全面的に肯定というわけにはいかなかった。自分でもめんどくさいと思うが、ガゾートを登場させるならそれ自体を主軸にした話を組んで欲しかった気持ちが強い。

 パイロットではティガから2体(正確には3体だが)の怪獣が登場した。そのこと自体は喜ばしいことではあるものの、扱いとして100点満点としてはつけられないところはあり、人によって60点そこそこになってしまっている部分もあるのは否めない。

早すぎた坂本監督の投入


 ちょっと悪手だったと思うのは、パイロットに坂本浩一監督を持ってきてしまったところだ。
 坂本監督といえば、ウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊、と色々な系統の色々な作品において活躍する、今の特撮作品においては欠かせない存在である。その腕前についてはもちろん疑うところはないものの、坂本監督の強みといえば作品におけるお祭り要素を演出する部分にあると個人的には考える。仮面ライダーでいえばMOVIE大戦、スーパー戦隊でいえばVSシリーズ、坂本監督は題材となった作品から要素を再編して面白く作品を仕上げるのが強いという印象が強い。
 一方で、アクションでキャラを魅せるという部分については郡を抜く腕を持つものの、それ以外のキャラ描写自体についてはややムラがあるタイプだとぼくは考えている。アクションができないタイプだと、殊更である。

 上記2つの観点からいくと、トリガーのパイロットで坂本監督の魅力を発揮するのは相当厳しかったのではないかと考えられる。今回のトリガーの主人公であるマナカ・ケンゴは、 学者肌であるゆえに荒っぽい行動はさせづらく、 坂本監督が色を出させるにはやや不得意なタイプのキャラだ。植物と絡めての描写を多くしないといけないという都合で、どうしても静的なシーンも多くなってしまう。かといってパイロットゆえに他の登場人物の個性もまだ蓄積されておらず、彼らを主人公の代替として使おうにもほぼ不可能な状況となっている。結果として、本来は視聴者に印象付ける必要があったマナカ・ケンゴは脚本のままに動かすことになり、アクション以外の個性付けとしてスマイルを連呼するキャラクター付けに行きついてしまったのではないかなぁ、と思う次第だ。
 坂本監督を起用すること自体に異論はないものの、もう少し物語が進んできたところで投入し、キャラたちの個性を深堀りさせるような回し方をしてもらった方が良かったのかもしれない。

盛り返してきた5話以降


 ウルトラマントリガーの4話までは、「特撮部分は良い」以外の箇所にはあまり加点できる点数がないお話が続いていた。しかし、それが5話からは見違えるように良くなってきている。特に『GUTS-SELECT』のメンバーの描写が多くなり、それにともなって主人公のマナカ・ケンゴの個性が描かれてきたのは評価すべき点だろう。ウルトラマンにおいて戦闘シーンはもちろん花なわけだが、そこに至るまでに展開される人間ドラマも欠かせない魅力の一つである。主人公の一風変わった口癖だけではなく、それを取り巻く仲間たちの描写で物語はいかようにも面白くなる。 『GUTS-SELECT』 のメンバーが描かれるようになったことで、やや無個性であったマナカ・ケンゴの強く感情が示される個性が出てきたのは見ていて非常に喜ばしいところだ。
 そして、先輩であるウルトラマンZが客演した6話と7話。全体的にギャグテイストになったことで「Z時空」にハイジャックされたところもあるが、それだけにとどまらず、ウルトラマントリガーの持つポテンシャルが色濃く示される素晴らしいコラボ回だったようにぼくは感じた。


 制作陣がどこまでその手綱を握り切れているかについて、最終的な評価は放映終了まで待つしかない。しかし、少なくとも現時点でそれを判断するのなら、5話以降からは掴み損ねていたそれを何とか握り返すことができているのではないかと思える話が続いている。一度は視聴を切ったという人もいることだろう。そういう人に対して、もう一度見返すだけの価値が出てきているということを保証したい。この面白さがこのあとが続くのかは正直分からないが、是非とも7話までは見てもう一度判断してもらいたいと思う。

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