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 著作権制度の見直しで創作活動がやりやすくなると良いよね、という話

 2021年7月13日、知的財産戦略本部から「知的財産推進計画2021」なる計画が発表された。
 副題は「コロナ後のデジタル・グリーン競争を勝ち抜く」となっており、アフターコロナにおける日本がデジタル時代(なんか言い方ダサいというか既に死語では???)での他国競争において主導権を握る、という趣旨での計画だ。
 興味がある人は以下に関連PDF等のURLを張っておくので自身の目で確認して下さい。

知的財産戦略本部(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202107/13chizai.html

知的財産推進計画2021
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20210713.pdf

知的財産推進計画2021概要
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20210713_gaiyou.pdf


概要

 計画書のPDFデータは140ページに渡る。
 興味のある部分だけ摘まみとって読めば良いと思うが、個人的に気になったのが、読売新聞オンラインでも取り扱われていた著作権制度の見直しについて(知的財産推進計画2021のP47~P60付近)である。

 簡単かつ一部分だけ切り取ってまとめると、

・スマートフォン等の普及
・コンテンツ消費はオンラインによる視聴・閲覧へ変化
・アマチュア層の創作物の商業利用、二次創作物の増大
⇒上記の「デジタル化・ネットワーク化による流通環境、消費動向及び創作環境の変化」と。グローバルなプラットフォームサービスの台頭により、コンテンツの価値は増大。このままでは日本は取り残されてしまう!

 こういう時代の中で、権利者が定かではない著作物等をまとめて管理する組織を作ることで、良質な作品を作れる環境を整えたい!日本のコンテンツ力をアップさせたい!ということでの動きのようだ。
 海賊版の存在や「漫画村」についても言及されており、国内外で不正利用される日本の著作物を取り締まり、正規の手段で収益化させて上げたいという部分もあるのだろう。その方が日本にも政府にもお金入るしね。

 菅首相自身が本部長を務めるという計画の中で言及されたこの大きな動き。
 実際にどの程度関わっているかはさておき、おそらく、新型コロナ流行がなければ年単位で動かなかった計画であろう。クールジャパン戦略で明るい情報を聞かない我が国なので、まぁ間違いない。重い腰はようやく上げられた。


-いずれ必要になるなら早いうちが良い-


 著作権制度の見直しで危惧されるのは、その組織自体が天下りの温床になるかもしれない、政府との利権が絡むといったところだろう。政府主導というところでこの手の問題は切り離せない。完全な透明性のある組織を作り出すことを求める声も少なくはないと予想される。

 しかし、完全に透明性のある組織なんて机上の空論である。
 組織自体が透明性のあるものかは、実際に動かして見なければ判断のつけようがない。
 独立した監査機関を設ける等は最低限すべきだとは思うが、とりあえずは組織自体を作って運営してもらうことがまず優先ではないだろうか。運営実態がないと予算も下りないし、予算がなければ実績も作れはしない。いつかは必要になる組織ならば、早い段階で作り出しておいた方が良い。何か有事があった際の対応が極めて取りづらくなってしまう。「漫画村」のように、誰かの著作物を我が物顔で利用して収益を得ようという輩は少なくない。


-著作権者が不明なのはとても面倒臭い-


 許可を求める相手、というのは分かりやすいに越したことはない。
 もし分からない場合、許可が必要になりそうな行動はほとんどの人が取らなくなってしまうためだ。

 私は趣味でニコニコ動画に動画投稿を行っているが、その中で「原盤使用許諾楽曲」というサービスを利用することがある。そこで記載されている楽曲についてはニコニコがJASRAC他のレコード会社から音楽利用の許諾をとっており、常識的な範囲内での利用であれば自由に行えるというものである。
 どの曲が許諾の降りているものなのか。JASRAC他の色々な音楽会社のホームページを右往左往せずとも、原盤使用許諾楽曲のホームページ内で検索すればはっきり分かるため、とても重宝している。
 許諾の降りていない曲は当然利用しないわけだが、中には著作権者がはっきりしないために記載できない曲もあるのだろうなぁと考えることがある。
 例えば、下記の引用部分などは数多くあることなのだと想像できる。

 現行の仕組みでは、テレビ局が過去に放送した番組などをオンライン配信する場合、番組内で使った音楽や写真などについて一つひとつ許諾を取る必要がある。古いドラマに登場する役者や劇中歌、ニュース中の写真が該当する。

 一方で、制作から時間が経過した作品を使いたいのに、著作権者と連絡が取れないほか、著作権者の死亡で相続人の特定が困難なケースがある。一部コンテンツで許諾を取れず、配信自体を断念する例もあるという。

【独自】往年の作品、ネット配信しやすく…著作権者不明でも料金納付すれば使用可能にhttps://news.yahoo.co.jp/articles/2a91e6121fc40abdb8667447533d37f8de59022b


 著作権者がはっきりとしていないコンテンツの二次的利用は、はっきりしているものより圧倒的に少なくなる。
 単純にやりにくいのだ。利用しようとして二の足を踏んでしまう経験が自分にもある。

 例えば大学の卒業論文では先行研究を引用するのが常だが、もし引用すること自体が何かしらの理由で禁止されたり難しい条件を課せられていたのならば、その研究に関連する記述は削除するしかないだろう。先行研究の存在は誰の目に触れることもなく、数多ある資料の中に埋もれてしまうに違いない。

 極めて知名度のあるような一部の著作物を除くとして、コンテンツにおいても同じことは言える。二次利用が全てでは決してないが、人目につく手段を減らしてしまえば、どんなに素晴らしい作品であっても社会からは忘れ去られていってしまう。気軽に利用できれば、そんなことは起こらないだろうに。
 それはさておき、著作権者がはっきりしない作品に何か名前がないのだろうかと調べたところ、「孤児作品」というものが見つかった。

 孤児作品という言葉をご存じだろうか。探しても権利者が見つからない作品のことだ。通常は、書籍・映像・各種データなどで著作権者が不明な状態をいう(孤児著作物)。最初はちょっと驚く名称なのだが、世界的に「オーファン・ワークス」と呼ばれており、これがデジタル社会の行方を左右する大問題となっている。

(中略)

作品・資料を利用しようにも許可が取れないのだ。複製してネットなどで公開しようとすれば、著作権者の許可がいる。権利者が見つからないからといって、無許可で使えば著作権侵害となってしまう。突然権利者が現れて高額の賠償請求でもされたら大変だ、そう考えて二の足を踏むケースが大半だろう。

そろそろ本気で「孤児作品」問題を考えよう
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/fukui/591351.html


 一度孤児作品として見定められてしまったコンテンツは、その扱いにくさゆえに加速度的に知名度を失っていく。
 それを避けるために、著作権者が不明のコンテンツにアクセスするための手段は多いに越したことはないはずだ。

 今回の知的財産推進計画2021において提言されているのは、あくまで権利者に連絡が取れないときを想定したときの受付先である。もし正当な著作権者が現れた場合、コンテンツの利用料をその著作権者に支払う等の方向性で案は出されている。このあたりはまだまだ議論が必要だろうが、悪い方向性ではないと自分は思う。

 

-著作権者が分からないコンテンツは増えていく-



 知的財産推進計画2021が言うところのデジタル時代において、制作環境や開発環境が整備されたことで著作権者がただ一人で済むという場合も、少なからず見受けられるようにはなった。しかし、それでも複数の権利にまたがって生み出されるコンテンツの方が圧倒的に多いはずだ。
 多人数が絡むコンテンツの著作権は、間違いなく時代を経れば分かりづらいものになっていく。

 著作権者が分からないコンテンツは増えていく。それは間違いことだ。

 ドラマ、映画、アニメといった映像作品。
 マンガや小説といった文章作品。
 家庭用、そしてソシャゲといったゲーム作品。

 2021年現在で流行っているコンテンツも、30年後や40年後にはほとんどが姿を消しているだろう。
 もし未来のクリエイターが昔のコンテンツから引用して新しいコンテンツを生み出そうとした際、彼らにかかる手間はできる限り少ないものになっているべきだと自分は考える。
 そのためにも、彼らが暫定的な許可を得られるような組織は早めに作っても良いのではないだろうかと思う次第だ。

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